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    クラウドやAIなどのテクノロジーを活用し、新たなサービスやビジネスを創造することが求められている。このデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代に向けて、エコシステムの取り組みを加速させているのが富士通だ。スタートアップとの共創プログラム、開発者コミュニティ、そして協業企業とのビジネス拡大の場となるマーケットプレイスなど、パートナーとのエコシステム活動の狙いやコラボレーションで生まれたさまざまな成果について話を伺った。

    お客様のデジタルトランスフォーメーションの成功をエコシステムで実現する

    「餅は餅屋」、自前主義からエコシステムへ

    ―まずは宮沢さん、板谷さんが所属するグローバルマーケティング本部ポートフォリオ戦略統括部エコシステム推進部のミッションをご紹介ください。

    宮沢 富士通のさまざまな商品やソリューションをどのように体系化し、お客様にお届けしていくか―。富士通がグローバルにビジネスを展開する中で、文字どおり「ポートフォリオ戦略」を担っています。

    ―活動領域はかなり広いのですね。

    板谷 そうですね。ポートフォリオの策定だけでなく、商品企画からプロモーションまで幅広く手がけています。端的に言えば、富士通の商品・サービスのビジネスを拡大していくための、あらゆる施策に関わっています。

     

    宮沢 そうした中で私たちが特に注力しているのが、エコシステムによる新たなビジネス展開です。ポートフォリオの強化の一環として、さまざまな企業との協業によって、新しい価値を持ったサービスやビジネスを創出していこうとしています。

    ―ただエコシステムづくりと聞くと、率直なところこれまでの富士通のイメージとはちょっと違っているような気もします。

    宮沢 ごもっともなご意見だと思います。富士通はもともと製造業ですので、技術に対するこだわりがあり、基本的には自分たちの商品は自分たちの手で作るという自前主義の文化が強いです。しかし、今の時代に求められているお客様のDXは、単独の企業のソリューションによって成し遂げられるものではありません。「餅は餅屋」のことわざにもあるように、多くの企業がそれぞれの得意技を持ち寄って、アライアンスを組みながらソリューションをつくっていく必要があります。これは私たちが富士通社内に対しても訴え続けてきたことでもあり、その甲斐あって、ここ2、3年でエコシステムの重要性に対する社内の認知度はずいぶん高まってきました。

     

    板谷 もちろん富士通として得意分野をさらに伸ばしていく必要があり、その意味でこだわっているのがクラウド、AI、IoT、モバイル、ブロックチェーン、セキュリティなどのテクノロジーです。これらのテクノロジーをベースに、SIベンダーやクラウドインテグレーター、SaaSベンダー、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)、スタートアップ、さらにはエンドユーザーの皆様とコラボレーションし、ともに新たな価値を創造しながらデジタルビジネスを展開しています。これが現在、富士通が一丸となって進めているエコシステムへの取り組みの概要です。

    ―エコシステムづくりに向けて、具体的にどんな施策を行っているのでしょうか。

    宮沢 大きく3つの活動を推進しています。スタートアップと富士通の協業と新規事業開発を目的としたコミュニティの「FUJITSU ACCELERATOR」。クラウドやAIなどのテクノロジー開発およびビジネス活用を目的とした開発者コミュニティである「FUJITSU TECH TALK」。そして、これらのコミュニティから生まれたソリューションやサービスを、Web販売によりビジネス拡大していくためのマーケットプレイス「FUJITSU MARKETPLACE」です。

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    スタートアップと本気の協業を推進し70件の協業実績

    ―3つの活動について、より詳しい内容をお教えいただけますか。

    宮沢 わかりました。まず3つの活動の中で最も早く、2015年から取り組みを開始したのがFUJITSU ACCELERATORです。先に申し上げたように、革新的なスタートアップの技術と富士通グループの商品、サービスをマッチングし、新たな事業機会の創出を目的に活動しています。この5年間で7回のプログラムを実施し、約120社との協業検討、70件の協業実績を生み出しました。
    他社でも同様の取り組みをされていますが、FUJITSU ACCELERATORの大きな特長は、富士通の事業部門(全24部門)の決裁者がピッチコンテストの時点から参加してコミットし、専任のサポートチームが協業検討をドライブすることです。この意思決定の本気度と検討の速さが、スタートアップの皆様からも高く評価されています。

    ―どんな協業実績がありますか。

    宮沢 AIの分野では、みらい翻訳社と協業しAI技術を活用した高品質な翻訳サービス「Zinrai(ジンライ)Translation Service」を開発しました。この翻訳サービスは富士通自身も社内実践を推進しており、2019年度中に全世界のグループ社員14万人が利用する計画です。言葉の壁を取り払うことで社員のコミュニケーションを活性化し、グローバルでビジネスがしやすくなるよう考えています。
    また、ロボット分野ではユニボロボット社と協業。同社が提供するコミュニケーションロボットと富士通のAI技術を連携させることで、自然な対人コミュニケーションを実現する「ロボットAIプラットフォーム」を開発しています。

    複数企業でコラボレーションし新たなサービスを生み出す

    ―さらに、もう1つの開発者コミュニティとしてFUJITSU TECH TALKがあるのですよね。

    宮沢 FUJITSU TECH TALKは、クラウドやAIをベースとしたシステムやサービスを提供する開発者のためのコミュニティです。4月からは、技術と未来をつなげるコミュニティFUJITSU TECH TALKとして活動しています。イベントやWeb/SNSを通じて富士通の最新の技術情報をダイレクトに提供し、参加者同士がコラボレーションするためのマッチングやフォローを実施したり、合わせて、参加企業向けの特別な支援プログラムも用意することで、新たなサービスやビジネスを実現する場となることを目指しています。
    参加企業はクラウドインテグレーターやSaaSベンダー、ISVなどで、2020年5月時点で245社570名に達しました。私たちがこのコミュニティの最大の成果として捉えているのは、1対1のパートナーシップにとどまらず、複数の企業のコラボレーションによってユニークなサービスやビジネスが生み出されていることです。

    ―こちらについても、ぜひ実績をご紹介ください。

    宮沢 マジックソフトウェア社が提供している超高速開発ツール「Magic xpa」にマネージドベンダーのスリーハンズ社と富士通がタッグを組んで、富士通のクラウドを採用したSaaS版を新たに提供開始しました。
    また、クラウドインテグレーターのフォレストバーウッド社、デザイン専門会社のアベデザイン社、AIソリューションベンダーのシグフォス社は、共同で合同会社ピットリーを立ち上げ、AIを活用したコミュニケーション型の画像販売サービス「ピットリー」の開発中で、まもなくサービスをローンチ予定です。ピットリーでは、富士通のクラウドを活用してもらっています。
    ほかにも富士通クラウドを活用した地方新聞電子版の共通プラットフォーム化など、さまざまなビジネスプロジェクトが始動しています。

    最新のデジタルサービスとお客様をつなぐ

    ―参加企業がそれぞれ得意とする技術を持ち寄り、組み合わせることで新しいサービスやビジネスが続々と誕生しているのですね 。では 、3つめのFUJITSU MARKETPLACEについてもご紹介いただけますか。

    板谷 こちらは私から説明させていただきます。FUJITSU MARKETPLACEはパートナーの皆様のビジネスチャンスを拡大するためのWeb販売チャネルです。すでに参加パートナーの商品84種(2020年5月現在)が掲載されており、お客様は役立つソリューションを探してその場でWeb注文し、すぐに使うことができます。また、掲載している商品は、富士通のデジタルマーケティングを活用してプロモーションを展開、広告や集客、アウトバウンドコールなどによる案件発掘も支援しています。これらの施策を通じて、コミュニティから生まれた新しいサービス・ソリューションとお客様をつなぎ、DXや新たな共創を実現していきます。

    ―エコシステムづくりに向けた、富士通の広範かつダイナミックな取り組みがよくわかりました。最後に今後に向けた展望をお聞かせください。

    宮沢 現在の3つの活動をもっと連動させることで新しいバリューチェーンを作り、沢山の成功事例を作っていきたいと思っています。スタートアップ企業が、FUJITSU ACCELERATORで事業化し、FUJITSU TECH TALKを通じで協業パートナーを獲得し、FUJITSU MARKETPLACEでビジネスを拡大。そして、日本を代表するユニコーン企業に成長する。こんなストーリーができたら、嬉しいですね。
    また、富士通は、毎年、テクノロジーやサービスのビジョンをメッセージとして発表していますが、今年のテーマは「Driving a Trust Future」です。デジタル社会が進む中で、データやテクノロジー、ビジネスに対する信頼がますます重要となります。今回ご紹介したエコシステムで、富士通がハブとなって多くのパートナーとお客様を信頼をベースにつないでいくことで、沢山のお客様のDXの成功を実現していきたいと考えています。

    ―なるほど、よくわかりました。本日は非常に興味深いお話をありがとうございました。

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    (左)宮沢健太氏 富士通 グローバルマーケティング本部 ポートフォリオ戦略統括部 エコシステム推進部 シニアディレクター
    (右)板谷由子氏 富士通 グローバルマーケティング本部 ポートフォリオ戦略統括部 エコシステム推進部 マネージャー

    宮沢 健太(みやざわ けんた)氏

    1992年富士通入社。システムエンジニアを経て、サーバービジネスの戦略企画・推進を担当。2010年より、クラウドビジネスや新規サービス事業の立ち上げに従事。2017年より、エコシステム戦略推進を担当。

    板谷 由子(いたや ゆうこ)氏

    2002年富士通入社。サポート、ネットワーク、クラウド等のサービスビジネスのプロモーションを担当後、デジタルマーケティング、Web販売チャネルを立ち上げ、2017年よりFUJITSU MARKETPLACEを企画・推進。

    編集・発刊
    株式会社サブスクリプション総合研究所

    2019年8月15日発行「Subscription YOU 03」

    Web公開日

    2020年6月16日

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