• 「HUMANOLOGY for the future ~人とテクノロジーで、その先をつくる。~」をビジョンに掲げ、さまざまなITソリューションを提供している電通国際情報サービス(以下、ISID)は、中期経営計画のもと「クロスイノベーション」という取り組みを推進している。複数の事業部が垣根を越えて協働することでどんな価値を提供していくのか、製造ソリューション事業部と金融ソリューション事業部の2人のリーダーに話を聞いた。

    違う組織や文化同士が組み合わさることで発想の幅は確実に広がっていく

    専門知識やノウハウ不足の異業種参入企業を支援

    ―まずは ISID がどんな会社なのか、ご紹介ください。

    信國 もともとISIDは、広告代理店の電通と米国 GeneralElectric Company(GE)のジョイントベンチャーとして 1975 年にスタートした企業です。以来40年超にわたり、お客様や社会の課題解決に貢献するさまざまなITソリューションを提供してきました。
    そして現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代を迎え、お客様はさらに大きな変革を求めるようになりました。そうした中で ISIDは
    「X Innovation(クロスイノベーション)」というテーマを中期経営計画に掲げています。SDGsおよびSociety5.0の実装・実現に貢献すべく、当社グループの強みであるFinTech、デジタルマーケティング、スマートエンタープライズ、ものづくり革新などの領域で、セグメント、テクノロジー、業界、企業、地域といった既存の枠組みを超えたイノベーションを支援し、新たな市場やサービスを開拓していこうとしています。

    信國 治郎氏 電通国際情報サービス 製造ソリューション事業部
    製造技術統括本部 戦略技術第2ユニット 戦略技術3部 部長

    ―クロスイノベーションは、具体的にどのような形でISIDのビジネスに体現され、発展しているのですか。

    齋木 私が担当している金融業界では、メルカリなどの新興勢力がQRコード決済を始めたり、伝統的な企業の中でもリクルートがレンディング(融資サービス)を始めたりといったように、この1、2年で異業種からの参入が加速しています。ただ、異業種企業にとって、金融業務に関する専門知識やノウハウが足りないケースが少なくありません。そうした部分を私たちが支援する形でビジネスが広がっています。

    2025 年までに“稼げるビジネス”を育成

    信國 私が担当している製造業でも「モノからコトへ」のキーワードのもと、従来の製品を売るビジネスからサービスを主体としたビジネスへの転換が叫ばれていますが、そうしたビジネスモデルの変革を実現するために暗中模索を続けるお客様に向けてISIDとしてのソリューションを提供すべく、大きく2 つの戦略を打ち出しています。
    1つは、昔かISIDが得意としてきた解析やシミュレーション系の強みを生かし、自動車業界で進むMaaS(Mobilityas a Service)やCASE(Connected,Autonomous, Shared, Electric)などの領域で、コトづくりを支援するものです。もう1つは、モノからコトへという大きな流れの中で、自分たちが提供する顧客体験をどのような価値として定義すべきなのか、さらにその価値をどうすれば最大化できるかといった取り組みを支援していくことです。お客様と一緒になって新しいサービスを作っていく、サービスデザインのご支援も行っています。

     

    齋木 ここであらためて述べておきたいのは、クロスイノベーションはお客様に対する新たなビジネスの提案だけではなく、ISID自身の変革のテーマでもあることです。

    ―それはどういうことでしょうか。

    信國 ISID社内でも既存の事業部の垣根を越えてクロスさせることで、新たなビジネス領域を生み出そうとしています。製造ソリューション事業部では 2018年に「ブートキャンプ」という新規ビジネス創出のための活動を行っていました。その一環として金融ソリューション事業部に参加してもらったところ、お互いに学ぶことが多く、「今後はぜひ一緒にやっていきましょう」と意気投合したのです。さらにその企画に、日本にまだ上陸していないビジネスモデルやテクノロジーを先行活用する組織として設立されたオープンイノベーションラボ(略称、イノラボ)が合流。中期経営計画と合わせて「2025年までに“稼げるビジネス”を育てる」という目標を掲げ、「クロスイノベーション2025」というプロジェクトがスタートしました。

    身近なところにも表れている技術や社会トレンドの変化

    ―クロスイノベーションのコンセプトからすると、今後の社会は業界・業種の境目はますます失われていくと考えられますか。

    齋木 そうですね。先に述べたように金融機関と事業会社やベンチャーの間ではお互いに声を掛け合って手を組む動きが出てきていますし、自動車会社もこの先なんの会社かわからなくなるような業態に変化していくことが予想されます。私たちも頭を柔らかくしてこの変化を捉えていかないと、時代の流れについていけません。

    齋木 健次氏 電通国際情報サービス金融 ソリューション事業部
    営業ユニット 営業企画部長

    ―少し視点を変えて、お二人は現在のテクノロジーや社会に関して、個人的にはどんなトレンドの変化を感じていますか。

    信國 技術的なトレンドとしては、SIの価値が大きく変化したことを痛感します。私がISIDに入社したのは 1997 年で、自動車開発のCADなどエンジニアリング領域のソリューションを担当してきました。当時はお客様先でサーバをセットアップすることから作業してきましたが、SaaSやPaaSから調達して利用できるようになった現在は、サーバのセットアップどころかサイジングやバックアップの設計さえ不要となり、よりお客様の業務やプロジェクトのゴールを意識してSIの差別化を図ることが重要になっています。また、社会的なトレンドの観点からはシェアリングサービスの台頭を感じています。私自身も電動自転車のシェアリングサービスをよく利用していますが、これに伴い以前は電車やバスなどの交通機関で移動ルートを考えていたのが、現在では自転車も手段として含めると今まで思いつかなかったルートが出てくる、など生活スタイルを大きく変えることができると思います。暮らしの選択肢を大きく増やすという意味で、シェアリングサービスはますます可能性を広げていくと思います。

     

    齋木 私は1998年にISIDに入社し、ずっと金融畑を歩んできました。数年前には北京に駐在し、目の当たりにしてきたのが、アリペイや WeChat Pay(微信支付)などキャッシュレス化の凄まじいほどのスピードです。
    ところが帰国してみると、日本のキャッシュレス化は、まだこれからの状況でした。日本はコンビニでもATMが利用できるなど、それなりに便利なのでキャッシュレス化はそれほど求められないのかもしれません。そんな違いを考えながら、金融機関がこれからの社会に果たしていくべき役割は何なのかを考え続けてきたのがこの2、3年で、自分なりに答を見出さなければならないテーマだと思っています。

    身近なところにも表れている技術や社会トレンドの変化

    ―そうしたトレンドの変化を肌感覚で捉えていく中から、日本のさまざまな業界の課題が見えてくるような気がします。

    齋木 金融業界に関していうと、先に述べたように日本の銀行はすでに便利な仕組みが出来上がっているので、中国や世界と比べて一概に遅れているとは考えていません。ただ、そうした中にも課題はあって、FinTech にしてもキャッシュレス化にしても、環八(東京都道 311 号環状八号線)の内側だけで盛り上がっている気がしています。

    ―要するに「東京都心部 vs その他の地域」という構図になっていると。

    齋木 おっしゃるとおりです。地方で暮らしている高齢者に無理やりスマホのUX(ユーザーエクスペリエンス)や QRコード決済を押し付けるのはあるべき姿ではなく、新しい金融サービスを自然と使いたくなるような環境づくりが必要です。ところが、東京都心部以外の金融サービスはどうあるべきなのかを考えている人が少ないのが現実です。地銀の奮起に期待したいところですが、どうしてもメガバンクにならったテクノロジーの導入に流れがちで、これが日本全体の課題となっています。

     

    信國 逆に製造業はほとんどのお客様が環八の外で活動しています(笑)。ただ、やはりそこにも多くの課題はあります。
    最近、強く感じているのが「技術者魂伝承の壁」です。これまでは熟練技術者の背中を見ながら次の世代が学んできましたが、少子化の影響を受けて若い技術者がどんどん減っており、熟練技術者も次々にリタイアしていきます。そうした構造的な人手不足が深刻化する中ではマニュアル化された仕事をこなすのが精一杯で、新しいことにチャレンジする余裕がありません。「失敗してもいいから、とにかくやってみろ」と若い技術者の背中を押すことが非常に難しくなっているのです。このままでは製造業の現場から、日本発のアイデアは出なくなってしまうかもしれません。

    ―話を戻すと、そうした課題を解決していくためにも、クロスイノベーションの考え方がますます重要になっていくのでしょうね。

    齋木 そう思います。これまでほとんど事業部間の交流がなく、文化が違えば提供するソリューションもお客様層も違う組織同士が組み合わさることで、発想の幅は確実に広がっています。その意味でクロスイノベーションの取り組みをISIDの全事業に拡大していきたいと考えています。

     

    信國 さらに言えば電通のほか、グループ会社とのクロスイノベーションやアセットの活用も可能です。今後のISIDの取り組みにぜひご期待ください。

    信國 治郎(のぶくに じろう)氏

    1997年ISID入社。自動車や電機精密といった製造業向けの三次CADやPLMシステム導入に従事する。2016年より製造業のサービタイゼーション支援としてビジネスの企画からシステム導入までを手掛け、現在に至る。

    齋木 健次(さいき けんじ)氏

    1998年ISIDに入社。開発部門にてインターネットバンキング等の設計構築を担当後、企画部門にて金融機関向けに新規ビジネスの企画・推進を担当。2014年より北京駐在。2016年に帰国後、Fintechコミュニティである「FINOLAB」の運営に従事。現在は、金融ITサービスの事業企画を担当。

    編集・発刊
    株式会社サブスクリプション総合研究所

    2020年2月17日発行「Subscription YOU 08」

    Web公開日

    2020年8月20日

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