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    生産労働人口の減少や成熟産業の事業価値低下が深刻な経営課題となるなか、中小企業ではIT分野の人材確保が十分とは言えず、ITサービスの選択・導入の段階から導入後の運用に至るまで大きな負担となっている。この課題解決に向けてコニカミノルタジャパンが提供を開始したのが、従量課金でアプリケーションを利用できる「Workplace Hubプラットフォーム」である。その企画および立ち上げを担ってきた3名のキーマンに話を聞いた。

    ITは決して身構えて導入するものではなくごく普通のビジネスの道具として使えるもの

    「使っていただけるIT」で人財価値を高める

    ―まずはコニカミノルタジャパンのビジネスをご紹介ください

    綿貫 コニカミノルタの主力製品は複合機であり、オフィスサービス分野が事業の主力です。さらに現在はコニカミノルタが培ってきたコア技術を生かし、デジタル印刷ニーズに応える最適な出力ソリューションを提供するプロフェッショナルプリント、医療のデジタル化を支えて診断サービスを向上するヘルスケア、光学技術を駆使してモノづくりに革新を起こす産業用光学システム、材料技術を結集して産業を支える新たな機能を実現する材料・コンポーネントといった分野にも事業ドメインを広げています。

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    (左)綿貫一樹氏 コニカミノルタジャパン マーケティング本部 
    オフィス事業統括部 技術企画開発部 部長
    (中央)上田耕司氏 コニカミノルタジャパン マーケティング本部
    オフィス事業統括部 技術企画開発部 医療情報技師
    (右)弓場愛子氏 コニカミノルタジャパン マーケティング本部
    オフィス事業統括部 技術企画開発部 担当課長

    ―積極的な事業展開ですが、一方で現在の日本の市場や社会をとらえたとき、懸念されることもあるのではないでしょうか

    綿貫 憂いは非常に大きいです。少子高齢化の進展に伴い労働人口が減少しているにもかかわらず、諸外国と比べて労働生産性は低く、成熟産業が中心で新しい産業がなかなか生まれてきません。内需は間違いなく減少し、日本国内のみで事業展開している企業は苦戦が予想されます。だからこそコニカミノルタジャパンとしても、これらの社会課題の解決のために何らかの形で貢献したいという思いを強く持っています。

    ―具体的にどんな提案を行っているのでしょうか。

    綿貫 人財価値を高めることです。日本人は定型的な仕事を正確にこなすのが得意とされていますが、欧米の先進企業は全く逆で、そうした仕事はすべて機械にやらせてきたといえます。日本企業がグローバル市場で彼らと競っていくためには、売上拡大に貢献するクリエイティブ人財への転換を図る必要があります。その取り組みを支えるのがIT利活用の促進で、私たち自身が皆様に「使っていただけるIT」を提供し、人財価値を高めるための時間を創出してほしいと考えています。

    ―御社がITサービスの提供に踏み出すのですか。

    綿貫 そうです。これまでITを使わない、使えないでいた中小企業を、導入と運用業務から解放する「Workplace Hubプラットフォーム」の提供を開始しました。

    ―面白いですね! 詳しく教えてください。

    綿貫 簡単に言えば、複合機とITのサービスを統合したシステム基盤です。仕様を広く公開することで多くのパートナーと協業し、コニカミノルタのアプリケーションやサービス以外にも多彩なラインナップを拡充していきます。なお、本プラットフォームに適合したハードウエア、アプリケーション、サービスを「Workplace Hub Platform Ready」と呼んでいます。ユーザーの皆様 は、Workplace Hubをご契約いただくことで、それらのオンプレ型アプリケーションやクラウド型アプリケーションを、手軽にご利用いただけます。

    複合機の基盤をそのまま生かした従量課金モデル

    ―Workplace Hubプラットフォームから提供されるアプリケーションやサービスを、ユーザーはどんな料金体系で利用できますか。

    綿貫 従量課金(Consumption Based Billing)モデルを採用しています。プリペイドの定額課金とは異なり、すべての利用者が全機能を使える状態で導入し、課金は実際に利用した処理量や対象数量に対してのみポストペイドで行うのが特長です

    ―月の途中で利用する人数や端末数が増えたとしても、新規に契約したりライセンスを追加したりする必要はないのですね。

    綿貫 そうです。Workplace Hubプラットフォームの従量課金モデルは、あくまでも処理量や対象数量に応じた利用実績に基づいて利用料を確定します。これによりユーザーは予期しない需要増にも柔軟に対応し、常に最適なコストでアプリケーションやサービスを利用することができます。また、パートナーは16種類用意されている従量課金モデルから任意のパターンを選択し、アプリケーションやサービスごとに設定することができます。

    ―16種類のパターンとは、どのようなものですか。

    綿貫 課金処理を日次と月次のどちらで行うのかを決定し、さらに計算式(合計値、平均値、最大値、出現数、数量)を組み合わせることで、合計16種類の従量課金モデルを実現しています。従量課金APIに送出されたログをもとに、アプリケーションごとに設定された課金モデルにより金額が算出されます。

    ―なぜ御社は、最初からこのような精密かつ自由度の高い従量課金の仕組みを用意することができたのでしょうか。世の多くのソフトウェアベンダーもサブスクリプション型のビジネスモデルに移行しようとしていますが、自社製品を定額課金(月額、年額)で提供するところでとどまっているのが実情です。

    上田 背景として、私たちはもともと複合機のビジネスにおいて、印刷枚数ごとに課金するカウンター料金を採用していたのが大きいです。その発想を、ITのアプリケーションやサービスに持ち込みました。

    ―新たに仕組みを構築する必要はなかったのですか。

    上田 新規に開発したのは、従量課金APIに送出された利用状況(メーター)の値をギャザリングする仕組みだけです。これにアプリケーションやサービスごとの単価をかけ合わせれば、料金を算出することができます。この毎月変動する料金を請求する仕組みは、もともとある複合機のシステムをそのまま利用しました。

    ―なるほど。もともと御社には従量課金に対するノウハウと、それを支える優れた基盤があったのですね。

    弓場 実は私は別の業界から転職してきた人間なのですが、その目で見ても、複合機のビジネスモデルは本当に卓越していると思います。世界市場を日本製の複合機が席捲しているのは、そんなところに理由があります。精緻なログの取り方からして技術レベルが非常に高く、基幹システムにしても、業務オペレーションにしても、他業界の企業が容易に真似できるものではありません。

     

    上田 もっとも、基盤はさることながら、Workplace Hubプラットフォームのコンセプトを世の中に提示するにあたっては、正直なところあまり自信がありませんでした。これまで売り切り型のビジネスモデルで戦ってきたアプリケーションベンダーやSIベンダーが、果たしてどこまで乗ってきてくれるのか、不安のほうが大きかったです。

     

    弓場 Workplace Hubプラットフォームを発表したのは2018年11月のことですが、そのイベント当日までドキドキでした。ただ、ふたを開けてみると多方面から反響があり、私たちがやろうとしていることは間違ってなかったのだと確信することができました。

    複合機の次の時代を支える事業のベースを構築

    ―賛同してくれるパートナーも多かったのですね。とはいえ、肝心のユーザーの受け止め方はどうだったのでしょうか。複合機を担当するのは総務部門、ITを担当するのは情報システム部門といった役割分担があり、権限が違えば、組織としての考え方にもギャップがありそうです。

    弓場 たしかに大企業のなかには、そうした組織間のギャップがあるかもしれません。ところが中小企業になると、意外とそれがないのです。複合機を担当している総務部門の同じ人物が、ITも担当しているケースがよくあります。そういう中小企業では、複合機から ITまで利用明細や請求書が一本化されたほうが経理処理も楽になると、メリットを感じていただいています。

     

    綿貫 結局、どういった課金体系が適しているのは、最終的には市場が決めることになると思います。ITに関しては従来どおり年間の予算を組み、計画的な導入や利用を行っていきたいというニーズも当然あるでしょう。ただ、個人的な考えを述べれば、動的な従量課金のモデルさえしっかりできていれば、プリペイド型の課金体系でアプリケーションやサービスを提供するのは、さほど難しいことではありません。お客様から前倒しでいただいた料金をストックしておき、パートナーへの支払いをコントロールすればよく、要するに当社側の会計手続きの問題をクリアするだけです。したがって今後、ニーズに応じて課金体系の選択肢を増やしていくことは十分に可能です。

    ―日本企業が新たなビジネスやサービスを展開しようとするとき、ともすれば欧米流の破壊的イノベーションに傾倒しがちです。御社はそうではなく、もっと根本的なところでIT活用にもがいている企業と寄り添い、本来の強さを底上げすることに貢献しようとする姿勢が、ひしひしと伝わってきました。

    綿貫 そう思っていただけたら、とてもうれしいです。ITは決して身構えて導入するものではなく、ごく普通のビジネスの道具として使えるものにしていかなければなりません。そうでなければ日本企業は次の変革のステップに踏み出すことができません。IT を当たり前に使いこなすなかで、生みだされた時間を本来のお客様自身の次のビジネスを創造するために、有効活用していただきたいと考えています。このコンセプトを、コニカミノルタでは「いいじかん設計」と呼んでおり、これによりお客様の社内の人財力も強化されるのだと確信しております。Workplace Hubプラットフォームを近視眼的な“建付け”にせず、企業における働き方改革の手段として位置づけ、これからも着実な発展を進めていきます。

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    綿貫 一樹(わたぬき かずき)氏

    大手SIでシステムエンジニアとして、主に大規模システムの基盤構築に従事。その後、ネットワーク/インフラを中心とするプロダクトやサービスの企画を担当。2012年コニカミノルタ入社後は、ソリューション商品の企画部門を担当。現在はWorkplace Hubを中心としたソリューションとビジネスモデルの企画を担当。

    上田 耕司(うえだ こうじ)氏

    前職SIer時代にはポスト三オン時代の金融系、製造・物流系、医療系等主に大規模システムの開発・構築、PMを担当。2008年からコニカミノルタ関連会社に参画し数々のソリューションを手がけ、2014年にコニカミノルタ入社。2017 年から現在国内Workplace Hub事業の一環で関連システム全般の設計開発に従事。

    弓場 愛子(ゆみば あいこ)氏

    大学でOne to Oneマーケティングを専攻。マーケティングコンサルティング企業、モバイル系ベンチャー企業、外資系金融企業などでeビジネス企画やDX事業立上等を経験し、2012年にコニカミノルタジャパンの事業戦略部に入社。2017年にITS事業企画部へ異動しWorkplace Hub事業立ち上げに従事。

    編集・発刊
    株式会社サブスクリプション総合研究所

    2019年10月15日発行「Subscription YOU 05」

    Web公開日

    2020年4月16日

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