• 2019年7月に創立20周年を迎えたNTTコミュニケーションズは、自らの新たなミッションを「DX Enabler」と定義。パートナーやその先にいるお客さまとの共創を通じてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、社会的課題を解決していくという事業戦略を明確に打ち出した。その最前線でビジネスをリードするアプリケーション&コンテンツサービス部の2人のキーマンに話を聞いた。

    ある業界にとって市場を拡大するチャンスは

    別の業界にとっては自分たちの市場を奪われるリスク

    新たな価値を最終的にエンドユーザー一人ひとりへ届ける

    ―2019年7月に創立20周年を迎えた NTTコミュニケーションズですが、次の20年に向けてどのような企業を目指しているのでしょうか。

    中野 おっしゃるとおり NTTコミュニケーションズは、今から約20年前の1999年に行われたNTTの持株連結経営移行に伴うグループ再編により、長距離・国際電話、インターネット通信を担う会社として設立されました。以来、インターネットサービスからグローバルネットワークサービス、さらにはAIやIoTなどを活用したスマート事業まで、広くお客さまのニーズにお応えしながらビジネスを拡大してきました。私たちはこの創立 20 周年という節目を今後の10 年、20 年を見据えた新たな“創業”と捉えており、人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する「DXEnabler」として、引き続き貢献していきたいと考えています。そこに新たに掲げたのが「Go the Distance.」というタグラインです。「距離を越えて行く」を意味する言葉ですが、単に物理的な距離だけでなく、言語や文化、世代や時間といったさまざまな隔たりを、ICTやデータの力でつなぎ、乗り越えていくという意味も込めています。創業当初から続くチャレンジ精神で、これからも多くのことに挑戦していきたいと考えています

    中野 誠氏 NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 第二サービスクリエーション部門長

    ―そんなNTTコミュニケーションズの中で、アプリケーション&コンテンツサービス部はどのような役割を担っているのでしょうか。

    中野 あらゆる産業がデジタルに進んでいく中で、その取り組みをアプリケーションレイヤから支えていくことをミッションとしています。NTTコミュニケーションズは、新たなビジネス戦略の核として「Smart DataPlatform」を提供しています。2018年度より開発を進めてきたデータの利活用を支えるサービス群を再編成したもので、データの収集から蓄積、管理、分析にいたるすべての機能をICTインフラも含めてワンストップで提供し、DXへの取り組みを加速させます。とはいえ、弊社が単独で DXを実現できるわけでありません。NTTグループは現在、さまざまな分野のパートナーとのコラボレーションを通じて次世代に受け継がれるスタンダードとなるサービスを創出すべく、新たな価値を最終的にエンドユーザーまで届ける「B2B2X」モデルへの変革を進めています。そうしたパートナーシップの最前線に立つのが、私たちアプリケーション&コンテンツサービス部だと考えています。

     

    田村 その戦略を象徴するのが、NTTグループの中期経営計画に掲げられた「YourValue Partner」というビジョンです。実際の事業活動を通じて研究開発やICT基盤、人材などさまざまな経営資源や能力を活用しながら、パートナーの皆さまとともに社会的課題の解決を目指していきます。一例として、「Smart Data Platform」の中で、企業の事業変革の一つでもあるサブスクリプションビジネスに必要な機能をSaaSとして提供する「Subsphere」には、提供開始以来多くの反響をいただいております。ご検討されているサブスクリプションビジネスの提供形態や取扱商材も多岐にわたっており、お客さま自身もDXを意識され、ビジネス環境が大きく転換していることを実感しています。「Subsphere」を通じ、お客さまのサブスクリプション事業の成功に少しでも貢献できればと考えております。

    自社の働き方改革の成果をバリューとして提供

    ―NTTコミュニケーションズは DXEnablerになるというお話もありましたが、そもそも今の日本社会でDXが急務となっている背景をどのように捉えていますか。

    中野 喫緊の問題となっているのは、2025年に約2,200万人が後期高齢者になるという超高齢社会の到来です。一方で若い世代の人口と労働力は減少を続け、市場そのものが縮小していく中で、企業は生産性を抜本的に高めないと立ちいかなくなり、グローバルで戦っていくための競争力も維持できなくなります。この日本のあらゆる産業に共通する課題の解決策として「デジタル」というキーワードが浮上しています。

    ―具体的にどのようなアプリケーションやサービスに注目していますか

    中野 1つは働き方改革を支えるアプリケーションやサービスです。働き方改革はNTTコミュニケーションズ自身にとっても不可避の取り組みであると同時に、その成果は広く世の中にバリューとして提供できると考えています。そうした観点から提供を開始したのが「Smart Go」というサービスです。交通系ICカードの「モバイルSuica」との自動連携により、交通費精算業務の大幅な簡素化を実現するものです。これまで従業員は少額の交通費を精算する際にも1件ごとに移動経路と金額を明記した申請書を作成しており、それを受け取った上長が承認し、経理部門がとりまとめて個人の銀行口座に振り込むという膨大な手間とコストをかけていました。そこで従業員のスマホにモバイルSuica のアプリをインストールし、「モバイルSuica」へのチャージを法人用クレジットカードで行うことで、立て替え払いの精算も不要となり、従業員の交通費精算業務をゼロにすることが可能です。また、モバイル Suica の利用データを AI で分析すれば不適切な利用をすぐに検知することができ、経理担当者によるチェックや個人口座への振込処理など、社内プロセスを劇的に効率化することも可能となります。

     

    田村 この Smart Goは「Smart WorkStyle」と定義した分野から提供しているサービス群の 1つです。NTTコミュニケーションズは、そのほか「Smart City」「Smart Factory」「Smart Mobility」「Smart Education」「Smart Health Care」「Smart Customer Experience」を加えた7つの分野から、DX実現に貢献するサービス群の強化と拡大を進めています。その中でも「Smart Work Style」は、まずは自社の社員を無駄な業務から解放することを目標とし、その知見やノウハウを社外へ提供することでお客さまを幸せにし、それがひいては社会課題の解決につながっていくという波及効果を強く意識しています。

    エコシステムを通じたビジネスを拡大する

    ―ただ、一方で個々の企業レベルの取り組みを見ると、DXは遅々として進んでいないという現実もあります。どのようなことをクリアすれば、NTTコミュニケーションズが描いているDXのビジョンはもっと浸透していくのでしょうか

    中野 非常に難しいことですが、やはり私たち自身が実践している変革を、世の中にしっかり見せていくことに尽きるのではないでしょうか。それも小手先でやれるような改善ではなく、自分たちのルールやカルチャーを変えるところまで踏み込んだ、思い切った変革の姿を世に示してこそ、一緒にDXを進めていきたいと考えるパートナーやお客さまが増えていくと考えています。

     

    田村 また、ICTのトレンドの変化をしっかり把握しつつ、私たちのビジネススタイルも変えていく必要があると考えています。これまで NTTコミュニケーションズは、お客さまごとの課題やニーズを深く理解し、より高い満足を感じていただけるソリューションを提供することに重点を置いたビジネスを展開してきました。もちろんこのスタイルは間違いではありません。
    昨今、特にSaaSの領域においては、DX のドライバーとして期待され、導入が進んでいるアプリケーションは、SalesforceやOffice 365、Boxなどの、個社別対応ではなく広くあまねく価値を提供しているサービスになってきています。ICTはお客さまとベンダーの受委託の関係性から導入するだけではなく、エコシステムというフラットな関係性の中で価値を共有しながら良いものを活用していくものへと変わりつつあります。NTTコミュニケーションズとしても、エコシステムを通じてビジネスを拡大していく必要性を強く感じています。

     

    田村 一美氏 NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 第二サービスクリエーション部門 第二グループ 担当部長

    日本の産業全体の競争力の底上げを図っていく

    ―自らの変革を指向したり、エコシステムを重視したビジネスへシフトしたり、背景にはNTTコミュニケーションズ自身の危機感もあるのでしょうか。

    中野 おっしゃるとおりです。例えば新しい技術トレンドとして、5Gに大きな期待が寄せられています。実際にあらゆる産業のビジネス、社会インフラ、人々の暮らしに大きなインパクトをもたらすと、私たち自身もその動向を強い関心をもって注目しています。
    しかし、今後のコンシューマーの世界を展望すると、その時々で最適なキャリアの通信回線をスマホが自動的に選んだり、AmazonやGoogle などが通信サービスまで織り込んだコンテンツを提供したりといったことも予想され、私たちキャリアは存在感を失ってしまうのではないかという危機感があります。単なる“土管”になってしまわないためにも、多彩なバリューをお客さまやパートナーとともに創り出していく存在でなければなりません。

    ―チャンスとリスクが同居しているのですね。

    中野 そうです。そしてそれは企業内だけでなく、企業間や業界間についても言えることです。ある業界にとって市場を拡大するチャンスは、別の業界にとっては自分たちの市場を奪われるリスクとなりますので―。そういった業界の垣根を超えたビジネスの創造や再編を促すのが、デジタル変革の本質ではないかと思います。

     

    田村 もっとも、NTTコミュニケーションズ自身がいわゆるディスラプション(創造的破壊)の主役になりたいわけではありません。私たちが目指すのはあくまでもエコシステムでの共創を通じた Win-Win のデジタル変革であり、それによって日本の産業全体の競争力の底上げを図っていくことがDX Enablerとしての使命です。

     

    中野 NTTコミュニケーションズの社名が指すコミュニケーションは、狭義の「通信」から、B2B2X モデルのもとで多くのパートナーやお客さまとともに新たな価値を作っていく、より広範な「対話」へと発展しました。

    ―なるほど。DX の実現に向けて NTTコミュニケーションズが果たそうとしている役割、立ち位置、戦略がよくわかりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

    中野 誠(なかの まこと)氏

    1995 年日本電信電話株式会社(NTT)入社。gooやOCNなどで新たなビジネスの立ち上げやパートナーとのアライアンスの構築を実施、

    現在はアプリケーションサービスおよび新ビジネス創出を担当。

    田村 一美(たむら かずみ)氏

    社内の料金管理システムの開発を経て、法人向けのアプリケーションレイヤを中心にシステム開発、PM、ICTコンサルタントに従事。

    クラウドビジネスにおけるコンサル組織の立ち上げを行い、現在、SaaSや新ビジネスのサービス企画を担当。

    編集・発刊
    株式会社サブスクリプション総合研究所

    2020年1月15日発行「Subscription YOU 07」

    Web公開日

    2020年7月16日

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