• broken image

    トヨタファイナンスは顧客のモビリティライフの充実を図り、より快適な生活サービスを提供していくため、サブスクリプション・プラットフォーム「TFC SubscMall」(ティーエフシー サブスクモール)」をリリースした。この新ビジネスの背景にあるのが、トヨタグループが長年にわたって大切にしてきた「町いちばん」という考え方だ。販売店と連携してその強みを最大限に活かしつつ、地域に根付いたリアルとデジタルの融合を推進していくというこの取り組みについて、同社のこの町いちばん企画室 室長 竹原康博氏に話を伺った(聞き手:ビープラッツ代表取締役社長 藤田健治) 。

    販売店と連携してその強みを活かし、

    トヨタグループならではの「リアルとデジタルの融合」を推進していく

    クルマ離れが進む時代に新しい形で顧客にリーチ

     

    ―トヨタファイナンスでは2021年7月にサブスクリプション・プラットフォーム「TFC SubscMall」をリリースされました。まずはこのサービスを立ち上げた目的をお聞かせください。

     

    竹原 私たちは、自動車を中心とした販売金融、カーライフをはじめとするお客さまのライフスタイルを応援するクレジットカードなどを主軸に金融事業を展開しているトヨタのグループ会社で、全国のトヨタ販売店とのネットワークや1,450万人を超えるカード会員の基盤を有しています。

    しかし、今後もトヨタのクルマが右肩上がりに売れ続けるとは限らず、若者のクルマ離れとも言われる非常に厳しい時代を迎えると予想しています。そうした状況の中で、新しいお客さまをどうやってつかんでいくのか。今までのような販売中心のビジネスではなく、新しい形でリーチしていく必要があると考え、着目したのがサブスクリプションです。

     

    ―並々ならぬ覚悟のようなものを感じます。

    竹原 実際、背景には大きな危機感があります。一家一台でクルマを所有するというライフスタイルは過去のものとなりつつあり、必要なときだけクルマを利用するカーシェアリングなどが伸びています。そうした時代の変化に手をこまねいているわけにはいかず、危機は自ら払拭していかなければなりません。

     

    生活をより豊かに快適にしていく多彩なサービスを展開

     

    ―TFC SubscMallで面白いと思ったのは、お客さまの多様なニーズにお応えするため多くの企業に参加を呼び掛けていることです。通常、自動車会社のグループ企業がサブスクリプションビジネスを始めるとなれば、販売店が扱っているクルマ関連のサービスに目線が向きがちになるような気がします。

     

    竹原 トヨタの販売店は業界でも卓越した営業力をもっているので、当然、私たちとしてもその力を活用したいと思っています。ただ、クルマから一歩離れた領域で、お客さまのことをわかっているかといえば、おそらくわかっていないのが現実です。

    そこでさまざまな企業と手を組み、クルマと直接関係がない商材についても生活を快適にするサービスとしてTFC SubscMallのプラットフォームに載せることで、お客さまのことをより深く理解するきっかけにしたいと考えました。これを販売店のさらなる営業力の強化や、新たなお客さまにリーチする機会につなげていこうとしています。

    なお、2022年にはトヨタブランドのスマートフォン決済アプリ「TOYOTAWallet」でサブスクリプションの支払いが できるようにする計画 で、TFC SubscMallとの相乗効果を生み出したいと考えています。

    ―TFC SubscMallを通じて、どんな商材やサービスを提供していこうとしているのでしょうか。

     

    竹原 まだはっきり定まっていないのが率直なところですが、たとえばクルマの定額洗車サービス、車内抗菌などのメンテナンスサービス、キャンプ用品、ハイエンドなカメラ(カメラブ株式会社と協業)などを提供しています。また、株式会社Culture Generation Japanとの協業によりTFC SubscMallから提供することになった和食器のサブスクリプションサービス「CRAFTAL(クラフタル)」では、全国の窯元や陶芸作家が生み出す伝統工芸品の器や堺打刃物技術で製造された包丁セットなどを販売するほか、実際に器を作る体験など特別なプランも用意しています。こうした多彩な商材やサービスのラインナップを今後もどんどん広げていく計画です。

     

    デジタルから離れたところにいた顧客とのつながりを広げる

     

    ―TFC SubscMallの概要がよくわかりました。このサブスクリプションビジネスを推進している部署の名称が、「この町いちばん企画室」というのも興味深いです。

     

    竹原 実はトヨタグループが、長年にわたって大切にしてきたのが「町いちばん」という考え方なのです。世界一でも日本一でもなく、私たちがお世話になっている町で、いちばん信頼され、いちばん愛される会社を目指す。それぞれの地域で必要とされる存在になるというものです。この思いをぶれさせることなく、サブスクリプションビジネスでもしっかり継承していこうと、「この町いちばん企画室」という名称を付けました。

    トヨタの販売店にご来店をいただいたお客さまに、「今はこんなサービスもやっているんですよ」とTFC SubscMallを紹介して喜んでもらったり、逆にトヨタユーザーではないお客さまにTFC SubscMallを通じて最寄りの販売店を知っていただいたりといった形で、しっかり町に根付いていけたらと思っています。

     

    ―サブスクリプションではありながら、最寄りの販売店との連携が重要なコンセプトになっているのですね。

    竹原 おっしゃるとおりです。トヨタユーザーの年齢層も今では60歳代が中心となっており、そのようなシニア世代のお客さまにとって、サブスクリプション型のサービスはまだ若干抵抗があります。そのようなお客さまに対して、販売店の営業スタッフが対面で対応することにより、さまざまなご相談に乗ったり、提案したりすることが可能となります。これまでデジタルから少し離れたところにいたお客さまと、新たなつながりを広げていくといった可能性が、販売店との連携から生まれてきます。

     

    ―TFC SubscMallへの申込にあたって、たとえばスマホの操作といったところからサポートしてもらえるのでしょうか。

     

    竹原 もちろんです。TFC SubscMallに入会するためにはWebサイトから手続きする必要がありますが、シニア世代のお客さまはその段階で立ち止まってしまうことがあります。そんな場面で販売店の営業スタッフがサポートに入れば、どんどん前に進むことができます。サブスクリプションならではの便利さ、そしてTFC SubscMallの楽しさは、使えば使うほど体感していただけます。そこにたどり着くまでのさまざまなハードルを乗り越えるためのお手伝いを、販売店の営業スタッフが行います。

     

    ―町の人たちにとっての等身大の「リアルとデジタルの融合」ですね。

     

    竹原 まさにそこがTFC SubscMallの狙いです。正直言って、これまでトヨタグループはデジタルに弱い会社でした。しかし、だからこそデジタルを上手く使いこなせないでいる人たちの気持ちもよくわかるのです。常にそうした人たちの目線に立って、町に根付いた販売店の強みを生かしながら、トヨタグループならではの「リアルとデジタルの融合」のあり方を追求していこうとしています。

    今回の取り組み開始はあくまでもその第1ステップであり、将来的にさらに多様なサブスクリプション型サービスの提供をしていくことも見据えています。

     

    ―その意味では、より多くのパートナーとの共創の輪も広げていきたいですね。

     

    竹原 そこが一番の課題といって過言ではありません。私どもはこのサブスクリプションビジネスで最初から大きな利益を上げられると考えているわけではなく、先に述べたようにあくまでも目的は、町でいちばん信頼され、愛される会社になることにあります。こうした私どもの理念に共感し、一緒に町や地域に貢献していきたいと賛同していただける方がいれば、ぜひパートナーとして手を組み、Win-Winの関係を築いていきたいと思います。

    broken image

    竹原 康博(たけはら やすひろ) 氏

    トヨタファイナンス株式会社 この町いちばん企画室 室長

    藤田 健治(ふじた けんじ)

    ビープラッツ株式会社 代表取締役社長

    編集・発刊株式会社サブスクリプション総合研究所

    2021年11月19日発行 通巻10号「Subscription YOU 特別号」

    Web公開日

    2023年7月13日

  • お気軽にお問合わせください

    デモのご依頼、検証環境のご相談などもご連絡お待ちしております